ランニングとVO2max

「Vo2maxが上がりました」、「最近キツく感じるのにVo2maxが下がったの関係していますか?」

ランニングの指導を通してこのような質問、言葉を聞くのは珍しくはありません。

GPSウォッチの普及により、多くの方が各メーカーの時計をランニングに用いるようになったと思います。時間、距離、心拍数、ピッチ(1分間での歩数)、ストライド、一つのランニングが終わると色んな情報がデータで示されます。
その中の一つにVo2maxがあります。
この時計のデータによりVo2maxという言葉を知った人も多いのではないでしょうか。

まず簡単にVo2maxについて明確にしておきましょう。
最大酸素摂取量と呼ばれ、身体が最大限に酸素を取り込める量です。その最大量を1分間あたり体重1kgで割った数字で表します。
もしVo2maxと表示されれば1分間で体重1kgあたり50mlの酸素を消費できるということになります。

酸素がどのような流れで利用されるかを簡単に知っておくといいと思います。

口、鼻により呼吸が行われ、気管を通って肺の中に空気が取り入れられます。肺の中で気管支に枝分けれし、末端にある肺胞から血液へと酸素が渡ります。酸素が血液に渡ってようやく酸素が摂取されたことになります。
気圧が高い方から低い方へと空気は流れ込むので、外と肺内部の気圧差が大きいほど取り入れやすく、少ないほど取り入れにくくなります。そのため山などの高いところに行くと気圧が下がり、気圧差が少なくなることで空気が流れ込みにくくなること、空気中に酸素濃度が少なくなることの両方により、高地では息切れがしやすいことになります。

ここからは血液中の赤血球に含まれるタンパク質、ヘモグロビンによって酸素は運搬されます。
貧血でヘモグロビンの数値が低いなどすると、一度に運ばれる酸素の数が少なくなることで心拍数が上がりやすい、息切れしやすいなどにも影響を与えるのはそのためです。
血液に入った酸素はヘモグロビンと結びつき、一度心臓へと入ります。ここから心臓の拍動により筋肉などの組織に向け血液とともに酸素が放出されます。
心臓も筋肉のため、鍛えられた心臓は大きくなり一回での血液の出量が多くなります。そのことから鍛えられた人は少ない心拍数で多くの酸素を送ることができ、息切れがしにくくなります。

筋肉に延びる毛細血管により酸素が取り込まれるため(酸素受け渡しの入り口と考えていいかもしれません)毛細血管量が多いことが受け渡しを素早くします。
筋肉内の細胞にはミトコンドリアと呼ばれるものがあり、ここでエネルギーが生産されます。エネルギー生産の最終局面で酸素が利用されることになります。

トレーニングにより肺、筋肉の毛細血管が増え、酸素を素早く渡せるようになります。心筋が鍛えられ、ヘモグロビン、体内血液量が増えることでより多くの酸素を運ぶことができるようになります。そしてミトコンドリアの濃度がますことで効率よく酸素を利用できるようになります。

取り込む
・呼吸により酸素を肺へ取り込む
・肺胞から血液へ酸素が渡る
運搬
・心臓の拍動により血液を全身に送る
・ヘモグロビン濃度(酸素を運ぶタンパク質)
・全身の血液量
・毛細血管量(酸素が筋肉内に取り込まれる)
利用
・筋肉内の細胞ミトコンドリア内で酸素が利用される

エネルギー生産のためにこれらの機能が最大限に働くポイントがVo2maxとなります。

こう聞くとVo2maxが高い人ほど酸素を多く使えるので速く走れるのではと、気になる数字でもあります。
ただ必ずしもVo2max高い=速いランナーというわけではありません。

Vo2maxのみでその人の走力を理解できるわけではありません。Vo2maxのデータだけを見て大まかにわかることはその人がどのくらい練習を積んでいるか程度です。
もちろんVo2max40台の人と70台の人どちらが速いか予想するなら後者を選択するでしょう。

例えばマラソン大会上位10名、箱根駅伝に出場する全選手のVo2maxを測定し、そのデータだけを見ても1-10位を当てることはできません。
実際に学生ランナーがオリンピックのメダリストよりも高いVo2maxを記録することもあります。
十分に練習を積んだランナーならVo2maxが頭打ちになっていることも珍しくなく、Vo2maxが上がっていないからと言って、走力が向上していないわけではありません。逆も然りで、必ずしもVo2max向上=走力向上になるわけでもありません。

ランニングはパラメーターゲームではないので一つの指標に振り回されないことが大切です。


これからランニングを始める人、まだ練習を始めてまもない人、伸び悩んでいる人、複雑に考えると数字に振り回されるハメになります。複雑な成り立ちですが、シンプルに、練習を継続を第一に考え色んなペースで色んな距離を走る、ことで身体はしっかり順応します。

同じ距離を以前よりも速いペースで走れるようになる、または同じペースで長い距離を走れるようになる、
上記2つのように簡単ではっきりした進歩の実感方法があります。

どうしてもVo2maxが気になる人は実際に測定しに行ってみるのもいいでしょう。

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