ランニングをこれから始めたい人、すでに長く取り組んでいる人、故障に悩む人など色んなことが気にかけることの一つにランニングフォームがあります。
フォーム改善を目的にドリルを行ったり、コーチに癖を指摘してもらうなど取り組みは様々です。
ここではフォーム改善を考える前にランニングの動きについて紹介していきます。
主な2つのフェーズ
ランニング動作は大きく二つのフェーズに分けられます。
1.スタンスフェーズ(足が地面に着地してから離れるまで)
2.スイングフェーズ(足が地面から離れて着地するまで)
簡単に説明すると
1のスタンスフェーズで自身が能動的に力を発揮する局面になります。
2のスイングフェーズでは地面からの受動的な力で身体が宙に浮いている局面、いわば身体が休んでいる局面になります。
それぞれの動きについて詳しく見ていきましょう。
スタンスフェーズ
この着地の時にブレーキがかかり地面からの衝撃を受けます。身体の中心から着地の位置が離れるほどブレーキの力は大きくなり衝撃も大きくなります。これがいわゆるオーバーストライドと言われ、エネルギーコスト(ある一定のペースを維持する上で必要なエネルギー)が多くなります。また最近では足が地面につく位置に注目が集まっていますが、前方からの着地をフォアフット、踵からの接地をリアフットなどと呼びます。上記の写真ではフォアフット接地になります。
着地した足が身体の真下を通り過ぎる瞬間をミッドスタンスと呼び、臀部の筋肉が伸びた状態からまさに縮んでいます。この臀部の力により体は前面に押し出され推進力の源になります。正確に言うならば着地からミッドスタンスまでが自身が能動的に力を発揮する局面になります。また足首部分に注目していただくと、ふくらはぎの筋肉が伸ばされていることが分かります。着地時に地面から跳ね返ってきた力でアキレス腱にストレッチがかかり、エネルギーが蓄えられている状態です。
臀部の筋肉が収縮し、股関節が伸びて身体が全身しようとしている局面です。
先ほど述べた、地面から跳ね返った力により足底、アキレス腱が伸ばされて蓄えられた力が放出される瞬間です。
臀部の筋肉が収縮する前にふくらはぎの筋肉で地面を蹴ってしまうと、地面からの反発や臀部の力を効率的に使えず効率の悪い走りになってしまいます。また過剰な負荷がふくらはぎに掛かってしまい怪我のリスクも高くなります。
ふくらはぎは臀部の力を使う際に足を正しい位置に固定する役割と考えましょう。
足の接地
上記でも少し説明しましたが足の前方から着地するフォアフット(つま先接地)、後方から着地するリアフット(踵接地)があります。
接地の位置は身体の動きの最終的な結果として表れていると思っていただくといいです。なのでどちらが良くて、どちらが悪いと言うことはありません。
ただ注目されるフォアフットにはそれなりの利点となる要素はあります。
フォアフットの方がリアフットに比べて足が地面についている時間が短くなること、これにより当然ピッチ(足の回転数)が速くなります。このピッチ数の増加による利点は地面からのエネルギーを効率よく使えると言うことです。
ミッドスタンスのところで述べましたが、アキレス腱に地面からのエネルギー蓄えられます。この力は接地が長くなるほど失われます。これはストレッチショートニングサイクルと呼ばれ、ストレッチのかかった筋肉(伸ばされた筋肉)はそのあとすぐに収縮する動作に移るのが速いほど高いエネルギーを発揮できます。地面の反発を使うとも言われます。
ジャンプする時をイメージしてもらうと分かりやすいのですが、ジャンプでは直立した状態から一度しゃがみ込み、切り返して再び起き上がる動作に繋げます。ここでしゃがみ込んでから一度止まってしまうとしゃがみ込んだ動作のエネルギーが消えてしまい、高いジャンプを行うことが困難になります。
そのためこのストレッチショートニングサイクルが効率的に行われると、同じペースを維持する上でも地面からのフリーのエネルギーをより多く使うことで自身が作り出すエネルギーが少なくなり、エネルギーコストの低下につながって、より長くペースを維持できることに繋がります。
効率よく地面の反発からのエネルギーを使える人は50%近くも推進力のエネルギーを地面から得ていると言われます。
柔らかい地面になると当然地面からの反発も少なくなるためエネルギーコストは高くなります。
クロスカントリーになるとその力が減るため、ロードレースなどと比較してクロスカントリーでは順位が極端に落ちてしまう選手の場合はそういったことも考えられます。
しかしその反面、着地時に関節を固定する力が弱いと姿勢は崩れ、上下動が生まれます。よく耳にする腰が落ちたフォームということになります。無理矢理フォアフット着地を行うために、足先だけ調整していては返って効率の悪い動作となり無駄なエネルギーが身体にかかる事になります。
足の着地部位フォアフットかリアフットよりも大事なのが着地位置、身体の重心の近い位置に着地することが大事になります。スプリント動作の場合はブレーキを極力無くすためにほぼ真下に近い位置に着地をしますが、基本的なランニングでは身体の重心のやや前方が適切です。
前に進む上でブレーキと聞くと極力避けたいような感じですが、このブレーキにより地面からの力の跳ね返りがあり、反発の力が利用されます。オーバーストライドによる過剰なブレーキは避けるべきですが、ブレーキの力によって生まれる利点もあることを覚えておきましょう。
レースや練習の終盤で身体が疲労してくると接地時間も長くなり、その分エネルギーコストも多くなります。そのため前半と比べて同じペースの維持が困難になってくる理由の一つでもあります。
身体への負荷
ランニングは直線運動のように考えられますが、ランニングの着地時には体重の約2.6倍の負荷がかかり前後からも体重の50%、左右から体重の20%の負荷がかかるます。
このため身体を安定させ、効率よくエネルギーを生み出すには様々な方向からの負荷に耐え切る筋力が必要になります。
スイングフェーズ
足が地面から離れ、地面からの力で身体は上方へ押し上げられます。これをスイングフェースと呼び、両方の足が宙に浮いてジャンプしている状態です。この局面では足の動きは受動的な動作となるため自身の力で動かしているわけではありません。脚が休んでいる状態と思っていただくといいでしょう。
離れた足が勢いよく上がり踵がお尻に当たる人もいます。これ単に地面に伝えた力が強く、その分跳ね返りも強いため自然と高くまで足が上がっていると思ってもらうといいでしょう。見た目だけを意識して太ももの後ろの筋肉、ハムストリングスを意識的に縮めて引き上げようとする人もいますが、このような動作を行うと自然な脚の流れを崩してしまい無駄なエネルギーとなっています。休むときに休めないと動く時に動かせないようなことです。また力を伝える局面は着地してからミッドスタンス(脚が身体の真下を過ぎる)までと説明したように、離れる時に蹴り上げても推進力へは繋がりません。
まとめ
このようにランニング動作は大きく2つのフェーズに分けて考えることができます。
今の自分の取り組みが返って悪影響を及ぼしている可能性もあります。あまり細かく考える必要はありませんが、身体は連動して動いているので一点だけの改善に気を取られないようにしましょう。
・関節を固める筋力の低下はピッチの低下によりストレッチショートニングサイクルの効果を損なう
・臀部の筋肉が主な推進力の源である
・エリート選手ほど働く時間(スタンスフェーズ)が短く、休む時間(スイングフェーズ)が長い
コメント