「最初は飛ばしすぎないように」「速いすぎる」
練習を始めてまもない方に、または練習を積んだきた人でも慣れないタイプの練習を行うとき、スタート前に上記のような言葉をかけることがよくあります。
自分で練習をやっていてもそうですが、故障でも休養でもしばらくやっていないスピードでの練習をするときに不安が入り混じった緊張感があります。「このペースで大丈夫かな」という不安が大きい時ほど最初にどんどんペースを上げてしまう傾向が自分自身にも、指導する方々にも見受けられます。
速いと思ってすぐにペースを落とすと今度は遅くなりすぎて、慌ててまたペースを上げる。一つのランの中で大きなペース変動が起きてしまい、タイムに振り回された練習になることも珍しくありません。
学生、実業団選手の練習を見ていても、しばらく練習から離脱していて復帰後に集団の先頭を引っ張ることになった選手はチームの設定のペースよりもゆっくりになるよりは速くなりすぎてしまうことの方が多く感じます。
逆に自信を持っている練習ほどゆったりとスタートを切り、走りのリズムを作って、ペースを安定させていくことができるように思います。そのため側から見ていると「ちょっと遅いんじゃないかな」と感じますが、タイムを見てみるとそんなことはなくむしろ速いこともあるぐらいです。どっしりと構えた気持ちが心の余裕を生み、結果として身体の力みも抜けて余裕を持って走っているように見えるのかもしれません。
「心・技・体」という要素が大切といわれます。長距離走では体力の面の際立ち、他のスポーツと比べると技術面は目に見えにくくあります。
同じランニングの短距離走でも、スタート練習、ドリル、など技術面に比重を置いた練習は筋力向上やスピード強化などの体力面に比重を置いた練習との違いを程度見て分か横田高校。
「不安の中で余裕を持って構える」、「ペースのコントロール」
これらは長距離走においての重要な心と技の点になります。
体力においては何も考えずにがむしゃらに走っていてもある程度までは向上します。しかし上記の2点には注意深く自身の傾向に意識を向けなければいつまで経っても変わらないままです。
「なんでこんなに焦っているのだろうか、不安になっているのだろうか」どんな時にこのような感じを覚えるのか。その時の心理状況にどう対応すればいいのかを学ぶには注意深く自身に意識を向ける必要があります。
練習で決まったペースを設けるとそのタイム通りを狙うというよりも、このペースなら「努力度はこのくらいだろうか、風が強いから少しいつもより頑張る必要があるな、今日の疲労感を考えるといつもよりきつく感じるかもしれない」などタイムそのものよりもペースと自身の感覚を照らし合わせながら走ることで、条件が変化する中でもペースのコントロールを学ぶことができます。
練習場所や気候条件が変化しても、練習の目的、内容に合わせてペースをコントロールが上達していく人たちがいる一方で、条件を少し変えるとペースが全く安定しない人もいます。この点に関しては走力と比例しているわけではありません。やはりどれだけ普段から自分に意識を向けているかが鍵となります。
「リラックス」が簡単でないのも心理面、技術面の要素が大きいためだと思います。重要な場面でリラックスして力を発揮したければ普段からの練習は不可欠です。
このように考えると「長距離走」は体力向上だけでのトレーニングではないことが分かります。ただ心理面、技術面の練習はその人の内面で起きているので見た目で分かるものでもありません。
ランニングクラブ、ペースメーカーがついている練習会などがあります。負荷をかける目的では有効に活用できると思います。練習でいいペースで走れれば気分がいいものですが、それだけにこだわらず、自身のコントロールを磨くために比重を置いた練習も組んでみるといいでしょう。
コメント