フォーム改善はコミュニケーションから始まる

ランニングフォームの改善、効率的なフォーム指導に関しては、よく聞かれる質問の一つで、いくつかブログも書いてはいます。

フォームに関しての説明や知見については書いているものの、「で、結局やってくれるんですか、やってくれないのですか」と、かえって混乱させてしまっているように反省しています。

フォーム指導やフォーム改善への取り組みはやっています。

ただ、期待するような「これ一つであっという間に激変」なんてことはできません。

今回は大まかな取り組みの流れを書いてみました。

1. 目的の確認。効果の判断をどのようにするのかを決める。

まずはフォームを改善する目的をしっかり一致させることが大事です。

動画などで比較して「フォームが変化した、やったぁ」で終わっていいなら、確かにその場で「あーだ、こーだ」言って変化を出すことはできます。

ただ、その先の目的――故障予防やレース、練習後半の疲労が出た中でいつも出る癖(上体の横ブレなど)を抑制して効率よく走りたいなど――があるはずです。

なので目的を一致させて取り組む。そして、それをどのように判断するのかも同時に決めることが大事です。

疲労した中で良い動き、フォームを保つことが目的でフォーム改善を始めたのに、「動きづくりを行って、この100mだけ走ってみて、ほら違うでしょ?」というのは、少なくともその取り組みが良い方向に向かっているかどうかの判断材料としては適切とは言えません。

効率の良いフォームに改善したいと言っても、どのようにして効率的になったと判断するのか。これも指標を作らないと、なんとなくいい感じがするだけで終わらせてしまいがちです。

以前のペースが楽になったとしても、それは単純に練習で体力がついただけかもしれません。

特に初心者は、練習の刺激に対して身体の反応が、練習を長くやっている人に比べると速いので、いろいろな成果が同時に出るため判断は難しくなります。

ラボで酸素の摂取量や心拍数、乳酸値を測りながらやるという手法もありますが、手間がかかることも考慮する必要があります。

2. 部分のチェック

改善したいポイントがはっきりと目に見える場合、例えば腕振りの横ブレを直したい、などもあれば、片足だけに体重がうまく乗せられない、前腿やふくらはぎにばかり負担がくる、など主観要素が強く、外から見ただけでは分かりにくい部分もあります。

よく「フォームを見てもらってアドバイスを下さい」と言われることもありますが、上体のブレや気になる腕振りを指摘することはできても、それがなぜ起きているのかを理解しないことには、その介入が有益なのかどうかを判断するのは難しいです。

そのため、いきなり全体を変えようとするのではなく、まずは各関節の部分ごとの動きをチェックします。

足首、膝、股関節のどの動きがうまく動いて、どの動きがうまく動かないのかを理解しておくと、気になる問題部分への介入のスタートを決めやすいためです。

一つの例として、片方の足に体重が乗った時にうまく股関節周りの筋肉が働かないと、臀部が横にシフトしてしまうことがあります。この時、バランスの抑制として反対側の腕を外に開くことで中心を整えようとする身体の反応があります。

この場合に無理に腕だけをまっすぐ振ってしまうと、かえってバランスの悪い結果を招くことも考えられます。

すると介入すべき場所は腕振りではなく、股関節周りの働きがなぜうまく働かないのかを調べる必要があります。

硬さの場合もありますし、筋力低下、感覚のズレなど、いろいろな要因があるので、まずは部分のチェックを行います。

3. 連動のチェック

部分のチェックだけでは、ランニング動作などのダイナミックな動きとの間に乖離があります。

一個の関節だけを動かす場合と、いくつかの関節が連動して動く場合では、同じ動きでも力の使い方は異なります。

そのため、片足立ちなどの立位動作をメインに(ただその場からは動かない)、バランス動作などで、各部分の傾向が連動動作にどう影響しているかを確認します。

仰向けになって足を上げる動きがうまくできないとします。それがそのまま立位動作の時にも股関節を折ることができないなど、直接的な関係が見える時もあります。

一方で、部分ごとには目立つ問題はなくても、連動になると足首の動きが過剰に出て、股関節があまり動かずに、膝への負担が大きくなる場合もあります。

例えば、走る際にすぐ太ももの前が疲れるのでフォームを改善したいという2人のランナーがいるとします。Aさんは上記で言う前者、部分ごとの問題が目立つケース。Bさんは後者の、部分ごとで見ると大きな問題はないが、連動になるとどこか一部が過剰に働いてしまうケース。

こうなると、同じ問題を解決したくても、同じような方法で進めるわけにはいかないのが分かります。

4. 取り組みと期間

ここまでやって、ようやく改善したいフォームのポイントと身体の傾向でつながる部分が大まかに見えてきます。

まずはこの取り組みから、という形でストレッチやバランス動作、ドリルなどのメニューを組み立てていきます。

次に、それをどのくらいの期間やるのかを決めて、反応が出るのかを見ないといけません。

ある程度の実感を得られるケースもあれば、まったく変化を感じられないケースもあります。

それによって次に何を介入するのかを考えます。

なので、「絶対これでうまくいく」というわけではありませんが、まずはここからスタートして、少なくともこの期間はやってみよう、そういった認識が大事です。

何に取り組み、どのくらいやるのかを決めて、次を考える。この繰り返し作業になります。

フォームの傾向を一般論で考えることがダメなわけではありません。ただ、一般論のアドバイスは個別の悩みとはかけ離れているケースが多いのも事実です。

映画監督の是枝裕和さんのエッセイに、以下のような言葉がありました。

テレビの仕事を始めた時に一番言われたのは「わかりやすく」ということでした。「誰にでもわかるように」と。もちろん人に伝える職業ですから、どうしたらその話を聞いてくれるのか?語る言葉は選びますし、話す順序も考えます。しかし、誰にでもわかる作品などあり得ない。それは言葉や映像、もっと言うとコミュニケーションを過信しているのだと思います。

<中略>

その複雑さを無かったことにして「わかりやすさ」だけを求め、客に媚びた結果、映画もテレビも幼稚化したのだと思います。

<中略>

「誰かひとりの人間を思い浮かべながら作れ」。これもデビュー当時、先輩に言われた一言です。視聴者などというあいまいな対象へ向かって作ったって、結局誰にも届かない。

思えば、こうやってブログ、または書くという作業をする際には、いつも誰かの質問がきっかけとなります。

とにかく多くのランナーに届いてほしいというよりは、あの人に対して(届くかどうかは別として)私の考えはこうです、と伝えたいことがある時のほうが、しっかり書けるように思います。

こう考えると、フォーム改善だけでなく、目標に向けたランニング指導においても、シンプルで最善な方法は、指導側と習う側のコミュニケーションによる試行錯誤なのだなと思います。

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