何かを上達させるために練習をする。その中で「量より質」という言葉をよく耳にします。
ランニングの練習においても、この「量より質」を重視した練習というのを聞くのは珍しくありません。
量より質を考える上では、どちらかというと、白黒はっきりさせるものではなく、どのくらいの練習量のランナーの話をしているのか、何の効果を求めているのかを明確にすることが大事です。
まず練習量の違いで考えると、月間1000km走るエリート選手と月間100km走る市民ランナーの方がいるとします。
月間1000kmを走っている人の場合、すでにかなりの練習量なので、これ以上走る距離を増やすよりは練習の内容を変えることの方が賢明です。
例えばいつも走っているジョギングのペースを上げるなど、練習全体のペース配分を変えることで「量より質」を重視するケースです。これだと確かに量より質というのがしっくりきます。
一方で後者の市民ランナーの方が、月間100kmの中でどんな練習をするのかを考え、ジョグを減らしてインターバル走でペースを上げて質を高めると言います。
しかしこの場合だとシンプルにジョギングを追加して、月間150km、200kmと量を増やすだけでも十分な成果を得られると思います。むしろ走行距離を増やしながら、必要に応じてスピード練習も追加することも十分に可能です。
「量より質、質より量」の話ではなく、月間100km程度の練習量であれば、量を増やしながら質を高めることも十分に可能です。そうなると、「量か質か」という二択ではなく、睡眠や食事、仕事との両立など、練習量を増やすための生活環境をどう整えるかが問題になってきます。
次にどんなトレーニングの効果を求めているのかを明確にすることです。
トレーニングの「質」が何を意味するのかは、求める効果によって変わります。ここが明確になっていないと質そのものを定義することもできません。
よくランニングの練習では距離=量、ペース=質のような捉えられ方がされます。
しかし単にペースを上げることが質を上げることではありません。
マラソンをやっている人なら、100mを全力疾走するトレーニングが質の高いトレーニングではないのは分かると思います。
するとマラソンに向けた練習をしている場合は、仮にこの方が3時間を目標にしているとしましょう。1kmあたり4分15秒のペースです。
このランナーが質を高めるために、1km3分30秒のペースで走る練習をするとします。
ただ負荷が高い分、4本で限界がきます。逆に1km5分で30kmのジョギングをします。
前者はペースを速く、距離が短い。後者はペースを遅く、距離が長い。
この方にとってどちらが質が高いのか、と言われると答えるのは難しいです。
ただマラソンペースに余裕を持たせるためという目的が明確なら前者の方が目的に合っているでしょう。逆にマラソンに向けた脚作り、という目的なら後者の方が目的に合った練習になります。
求める練習効果と距離、ペースの関係性により質の高さは決まります。
練習の目的があり、それを構成する要素に、距離とペースがある。目的に対して距離とペースの関連性が練習の質を作る。こう考えると、距離=量、ペース=質、という考えが当てはまらないのがわかります。
身体が許容できる練習量には限界があります。
すでにかなりの練習量を行っている場合、さらに量を増やすことで得られるメリットよりも、疲労や怪我などのリスクが大きくなることがあります。そうなれば、練習量を増やすことよりも、現在の練習量の中身を考え直すことが重要になります。
これが、練習量のスケールという観点から見た「量より質」です。
一方で、もう少し細かく一つの練習にスポットを当てると、求める練習効果と、距離やペースとの関連性によって「質」の意味が変わります。
量と質の考え方はいろいろあると思います。
ただ、漠然と「量より質」と考えるのではなく、今の自分にとって本当に量と質が相反しているのか、そして何の効果を求めているのかを考えてみる。
そうすると、自分にとっての「質の高い練習」が何なのかも、少しずつ見えてくるのではないでしょうか。

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