「坂ダッシュ」
この言葉を聞くと、すごくハードなトレーニングをイメージする人が多いかもしれません。
そのためアスリートがやるもの、自分には縁がないものと考えてしまうのも無理ありません。
実際に脚がパンパンになって動かなくなる、息が上がって苦しい、吐き気がして倒れ込む、そんなケースもあります。
しかし坂ダッシュ=全てがそのような苦痛を伴うものではありません。
走るペース(努力度)、疾走距離、本数、休憩時間。
これらの関係性により身体にかかる負荷が決まります。
この4つの要素の関係性を間違えると想像以上にきつくなったり、目的に反した負荷がかかり、思っていた成果が得られなくなります。
例えばペースに対して距離が長すぎたり、休憩時間が短すぎたりすると、息は上がり、ペースは落ちてしまうなどがあります。
苦しんだにも関わらず、速いペースで走ることで得られる負荷とは異なります。
逆にこれらの要素を上手に考慮すれば、坂ダッシュは誰もが取り組めるものです。
先日、コンディショニングのクラスに参加された方から質問がありました。
「健康のためにジョギングを始めたのですが、走った後に足首付近が疼いたり、やや痛みが伴ったりしてこの先継続できるか不安です。何か走り方の改善にできることはありますか?」
パーソナルのセッションで詳しく身体の状態を見ることができるのなら、他に提案をすることもあったのですが、そこまではクラスではできなかったので、ランニングによるまた別の負荷として提案したのが坂道ダッシュです。
足が痛いのにダッシュと思われるかもしれません。ただ、走り初めから痛い場合ではなく毎回後半やランニングの後に症状が出ることから、着地の際に関節をうまく安定させられていない可能性も考えました。
ウォーキング、自転車や水泳、主に心肺機能を鍛えるその他の運動とランニングで大きく異なる要素を一つ挙げるなら、ランニングでは身体が一度宙に浮くため、地面からの衝撃を受ける点です。
ランニング動作についてはこちらに書いています。

ランニングは一歩ごとに身体を宙に浮かせる、いわば細かいジャンプ動作になるので、身体を浮かせるだけの力を地面に加える必要があります。
長く運動をしていない状態から走り始めた方で、いざゆっくりジョギングをしてみると靴底が地面を擦るような感じで「ズルッ、ズルッ」と音がする経験をした方がいらっしゃるかもしれません。
このような動作になるとかえって変な負担を身体にかけてしまい、ゆっくりの健康ジョギングで痛みが出たり、怪我をしてしまう可能性が高くなるように思います。
心肺機能が著しく低下することが健康によくないとすれば、筋力の低下も同様です。
そのため健康を考慮するなら、ジョギングと同時に、しっかり地面を押して身体を浮かせるだけの筋力強化、そのための坂ダッシュをおすすめします。
では最初に説明した4つの要素を考慮した筋力強化の坂ダッシュのやり方を説明します。
やや傾斜のきつい坂道を見つけましょう。
まずはペース(努力度)ですが、ダッシュの名の通り全力です。
次に疾走距離ですが、8-10秒程度に設定します。
50m走が8秒の人なら坂を考慮して40m程度でしょうか。
理由としては、全力で大きな力を発揮できる時間には限りがあります。そこで、力を落とさず走れる時間として8~10秒程度を目安にします。呼吸が苦しくなったり、脚が動かないほどしんどくなったりするのは、20秒、30秒と全力で走り続けることで起こります。
本数ですが、まずは5本程度から始めましょう。
増やしていくかどうかは目的によって変わります。健康維持の人なら増やすよりも継続を、より強化したい人なら徐々に10本程度まで増やします。
最後に休憩時間ですが、2分以上にします。
8-10秒程度なら大きく息が上がることはなく苦しさも伴いません。よく言われる「脚がパンパン」などのような状態にもなりません。
それなのに休憩時間が思ったよりも長くて、実際に指導していると、坂を駆け降りてきてすぐに2本目と次をスタートしようとする人が目立ちます。
疾走距離のところで説明したように、しっかり全力を出せるように十分回復することが大切ですので2分程度は休みます。
休憩を短くして走った方が、苦しさやきつさを感じるので、「練習をよりやった」という感覚は得られます。ただここでの目的は1本ごとに全力の力を発揮することで、疲労困憊でもがくように走ることではありません。
最低2分。3分になっても構いませんので、きつさを求めず1本目から最後の1本までペースダウンしないことが大切です。
健康の定義は様々ですが、食事ではいろんな栄養素を摂りましょうと言われるように、運動でも多様な負荷をかけることが大事です。
ゆっくりのジョギングを基盤として、時に坂ダッシュを組み込んでみてはどうでしょうか。

コメント